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職場で起こりやすいハラスメント|ハラスメントの種類や対処法など

ハラスメントとは、人の尊厳を傷つけ、精神的・肉体的な苦痛を覚えさせる行為全般を意味し、いわゆるいじめや嫌がらせがこれに当たります。

ハラスメントには、さまざまな種類がありますが、企業としては、ハラスメントの種類、発生原因と対処法について理解しておくことが大切です。

以下では、職場で起こりがちな、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、マタニティハラスメントについて、解説していきます。

 

 

パワーハラスメント

 

職場における「パワーハラスメント」(パワハラ)とは、職場において行われる① 優越的な関係を背景とした言動であって、② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③ 労働者の就業環境が害されるものをいいます。

客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、パワハラに当たりません。

 

パワハラは、上司から部下に対して行われることが多く、①暴力、②精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・暴言)、③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)、④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)、⑤過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)、⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)などが挙げられます。

 

パワハラの種類も多岐にわたり、特に業務上行われたものについては、適正な業務指示や指導との区別が難しい面もありますが、判断のポイントとなるのは、人格を否定するものと言えるかどうかということになります。

パワハラに該当する言動としては、①「馬鹿」や「死ね」などのひどい暴言を吐く、②業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行う、③他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行う、④相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を複数の労働者宛てに送信する、などが挙げられます。一方で、①遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して一定程度強く注意をする、②その企業の業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行った労働者に対して、一定程度強く注意をする、などの行動は、適正な業務指示や指導の範囲内であり、パワハラには該当しないと考えられています。

 

 

セクシュアルハラスメント

 

セクシュアルハラスメント(セクハラ)は、職場におけるセクシュアルハラスメントは、職場において行われる、労働者の意に反する「性的な言動」に対する労働者の対応によりその労働者が労働条件について不利益を受けたり、「性的な言動」により就業環境が害されることをいいます。

 

職場におけるセクシュアルハラスメントには「対価型」と「環境型」があります。

 

対価型セクシュアルハラスメントとは、労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応(拒否や抵抗)により、その労働者が解雇、降格、減給、労働契約の更新拒否、昇進・昇格の対象からの除外、客観的に見て不利益な配置転換などの不利益を受けることです。

職場で社長が労働者に性的な関係を要求したが、拒否されたため、その労働者を解雇することなどが挙げられます。

 

環境型セクシュアルハラスメント」とは労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなどその労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることです。

例えば、職場で上司が労働者の腰、胸などに度々触ったため、労働者が苦痛に感じ、就業意欲が低下していることなどが挙げられます。

 

セクシュアルハラスメントの状況は多様であり、判断に当たり個別の状況を斟酌する必要がありますが、判断に当たっては、労働者の主観のみならず客観性も考慮する必要があります。

一般的には意に反する身体的接触によって強い精神的苦痛を被る場合には、一回でも就業環境を害することとなり得ます。

また、男女の認識の違いにより生じている面があることを考慮すると、被害を受けた労働者が女性である場合には平均的な女性労働者の感じ方を基準とし、被害を受けた労働者が男性である場合には平均的な男性労働者の感じ方を基準とすることが適当とされています。

 

 

マタニティハラスメント

 

職場におけるマタニティハラスメント(マタハラ)とは、職場において行われる上司・同僚からの言動(妊娠・出産・育児に関する言動)により、妊娠・出産した女性労働者の就業環境が害されることです。

妊娠・出産・育休などを理由とする、解雇・雇い止め・降格などの不利益な取り扱いはもちろんですが、産前産後休業・育児休業の取得について上司に相談したところ、取得を拒否された場合なども、マタニティハラスメントに該当します。

 

もっとも、業務分担や安全配慮等の観点から、客観的にみて、業務上の必要性に基づく言動によるものはハラスメントには該当しませんが、労働者の意を汲まない一方的な通告はハラスメントとなる可能性が高まりますので注意が必要です。

 

 

ハラスメント防止措置

 

ハラスメントは、被害者の身体生命のみならず、人格や尊厳をも害する行為であり、決して許されない行為といえます。

ハラスメントは、被害者にとってダメージであるのみならず、企業のイメージダウンにも繋がります。

 

労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法は、企業に対して雇用管理上の措置義務や不利益扱い禁止などの義務を課しています。

これらの法律により、企業は、パワハラ、セクハラ、マタハラにより、労働者の就業環境が害されることのないよう、労働者からの相談に応じ、適切に対応するための体制の整備を行う義務があります。また、企業は、労働者がハラスメントについての相談を行ったことや雇用管理上の措置に協力して事実を述べたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いをすることは、法律上禁止されています。

企業の行うべき雇用管理上の措置の内容としては、①ハラスメント事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発、労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、③職場におけるハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応、④相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨労働者に周知すること、⑤相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること、などがあげられます。

 

企業は、労働者に対して安全配慮義務を負っていることから、ハラスメントが生じた場合、ハラスメントを行った労働者のみならず、企業も損害賠償請求の対象となり、責任追及がなされることがほとんどです。

企業が、雇用管理上必要な措置を講じていないような場合には、企業の安全配慮義務違反が認められる方向に作用することが想定されるため、ハラスメントの防止措置を講じておくことが重要です。

何より、ハラスメントを防止することにより、良好な職場環境となり、企業の成長に資することとなります。

 

 

実際にハラスメントが起こってしまったら

 

最後に、ハラスメント防止措置を講じていたとしても、ハラスメントが起こってしまうことはあります。

企業としては、ハラスメントが起こってしまったときの対応が非常に重要です。

まずは、ハラスメントを受けた被害者からの相談や苦情をしっかりと受け止め、真摯に向き合うことが大切です。

事実関係をしっかりと確認し、被害者や加害者、第三者に対して聞き取り調査を行います。

この際に、被害者を咎め、被害者の傷をさらに痛めるような調査を行わないように注意が必要です。

事実確認をしっかりと行ったうえで、就業規則上禁止されているハラスメントにあたるのか判断し、ハラスメントに該当する場合は、就業規則に従い、行為者に対する措置を行うことになります。

最後に、ハラスメントの原因や背景等を踏まえ、再発防止に向けた措置を講じます。

 

こういったハラスメントへの対応で、問題が解決することもありえますが、調査方法やハラスメントに該当するかどうかの判断など、難しい判断が求められることも少なくありません。

一歩間違えれば、企業の責任も問われることがありますので、弁護士と連携の上で、対応することが望ましいと言えます。

 

 

弁護士・福岡 祐樹(中嶋法律事務所)は、債権回収のほか、介護事業トラブル、不動産トラブル、企業法務などを中心に取り扱っております。新宿区、渋谷区、中央区、文京区、千代田区、江東区などで事業を行っている方を中心にご相談を受けております。お気軽にご相談ください。

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弁護士 福岡祐樹

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第一東京弁護士会
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債権回収

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企業法務

執務方針
依頼者の皆様のご依頼、ご要望を最大限実現するために、誠実に粘り強く取り組みます。
経歴
2002年3月 香川県立高松高等学校 卒業
2006年3月 東京大学法学部 卒業
2008年3月 東京大学大学院法学政治学研究科 卒業
2009年12月

弁護士登録(62期)

田辺総合法律事務所入所

2013年3月 民間企業へ社内弁護士として出向(2016年3月まで)
2016年4月 中嶋法律事務所入所
著書・講演 等

『【Q&A】大規模災害に備える企業法務の課題と実務対応』(清文社・共著)

『会社が労働審判手続を申し立てられた場合の実務対応』

(BUSINESS LAW JOURNAL 2012.3 No.48)

『病院・診療所経営の法律相談』(青林書院・共著)

『企業間契約交渉におけるトラブルと実務上の留意点~契約締結上の過失を中心に~』(BUSINESS LAW JOURNAL 2014.4 No.73)

『わかりやすい保育所運営の手引-Q&Aとトラブル事例-』

(新日本法規・共著)

『逐条 破産法・民事再生法の読み方』(商事法務・共著)

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